お城めぐりをしていても、石垣がどの積み方で積まれているのかわかりません。見分ける方法やそれぞれの特徴が知りたいな。
今回はこのような石垣の積み方にまつわる疑問に答えていきます。
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お城の石垣といっても、石の加工具合3種類と積み方2種類の組み合わせで、6種類の石垣があります。
この記事では写真を使いながら解説していきます。
- お城の石垣の役割とは?
- 基本的な石垣の積み方
- 野面積み
- 打ち込み接ぎ
- 切り込み接ぎ
- 乱積み
- 布積み
- 番外編
- 谷積み
- 亀甲積み
- 玉石積み
- 石垣の年代の目安になる「算木積み」
今回紹介する石垣の積み方やそれぞれの特徴を覚えておいて(現地でこの記事を見ながらでもOK)、次回お城めぐりに行った時にぜひ石垣に注目してみてください。
では解説していきます。
Contents
【基礎知識】お城の石垣の役割とは?
戦国〜江戸時代のお城の石垣には、主に2つの役割がありました。
- 新兵器「鉄砲、火縄銃」のデメリットをなくす
- 権力・財力のアピール
新兵器「鉄砲、火縄銃」のデメリットをなくす
1つ目「鉄砲、火縄銃のデメリットをなくす」とは、「石垣」と「櫓」を組み合わせることで初めて達成。
なぜなら、土塁より強固な石垣ならば重量のある櫓を建てることができ、櫓の内部から天気に関係なく鉄砲を放つことができるようになりました。
火縄銃は火のついた縄を火薬に着火させることで、銃弾を発射します。
ですので風雨の影響で縄の火が消えたり、火薬が湿気ってしまうと使い物になりません。
実際に大阪城や広島城などでは60基以上も建てていて、名古屋城の本丸は多門櫓という建物で囲まれていました。
石垣とその上に櫓を建てることで、火縄銃のデメリットを減らせました。
権力・財力のアピール
石垣を築くことは「権力・財力」のアピールになりました。
なぜなら石材の運搬・加工と石垣構築には多大な労力・資金と技術者が必要で、用意できる大名は限られていたから。
領地が小さければ人口も少ないので、兵士と農民を除いて石垣工事にあたらせる人を雇うことが困難でした。
実際に織田信長は小牧山城や岐阜城で自分の館の周囲にだけ石垣を作っていたし、安土城では石垣と天主を組み合わせることで権力と財力をアピールしています。
このように大きく高い石垣をつくることは権力・財力のアピールになっていました。
スポンサーリンク石垣の基本的な積み方5つ
お城の石垣は石材の加工具合と積み方の違ってきます。
石材の加工具合で3種類、積み方で2種類あり、それぞれの組み合わせで6パターン。
石材の加工具合による分類
- 野面積み
- 打ち込み接ぎ
- 切り込み接ぎ
積み方による分類
- 乱積み
- 布積み
上記の5つについて解説していきます。
自然石をそのまま積み上げた【野面積み】
- 自然石をほとんど加工しないで積んでいく方法
- 水ハケが良い
- 他の積み方と比較しても耐久性は劣らない
- 大きさ、形が不揃いな石を積んでいくので高い技術が必要
- 地震に強い
野面積み(のづらづみ)は一番古い積み方で、石(築石(ちくいし)、積石とよんでます)をほとんど加工していない自然石をそのまま使っています。
不揃いな石を巧みに噛み合わせて積むには高い技術が必要です。
不揃いな石を使っているので当然すき間が空いてしまいます。
このすき間には間詰石(まづめいし)とよばれる小さな石を挟んでいました。
すき間があるので登りやすいく不利になるんじゃないかと思うかもしれません。
しかしすき間があることでメリットもあります。
1つは水ハケが良いこと。
雨が降って石垣の裏の土が水分を含むと石垣が崩れる原因になっていました。
石同士にすき間があることで適切に水分を排出することができ、崩れにくくなっています。
もう1つは地震に強いこと。
地震のときにすき間と間詰石がクッションになることで、揺れにも強い石垣になっています。
野面積みが見れる代表的なお城は観音寺城、安土城(両方とも滋賀県)。
ちょっと石を加工した【打ち込み接ぎ】
- 石(築石)を削ってすき間を減らした積み方
- すき間には間詰石を詰めた
- 野面積みより高く積むことができる
- 関ヶ原の戦い(1600年)〜大阪の陣(1615年)ころに築城されたお城に多い積み方
打ち込み接ぎ(はぎ)は野面積みのあとに出てきた積み方。
自然石をそのまま使った野面積みとは違い、築石を加工してしっかり噛み合うようにし、すき間を減らしていました。
そのため野面積みよりも高い石垣を築けます。
関ヶ原の戦い前後(1600年)から大阪の陣(1615年)ころに築城されたお城の石垣に打ち込み接ぎが多く使われています。
代表的なお城は姫路城(兵庫県)、名古屋城(愛知県)。
石を完全に加工した【切り込み接ぎ】
- 石(築石)を四角く加工し、すき間がないようにする積み方
- すき間がないので間詰石は使わない
- すき間がまったくないので登るのは難しい
- 石が並んでいる様子がモザイクアートのようで美しい
- 大坂の陣(1615年)以降に普及した積み方
切り込み接ぎ(はぎ)は築石を完全に四角く(サイコロ状に)加工して積み上げていきます。
切り込み接ぎは野面積み、打ち込み接ぎより新しい積み方だけど、最も優れていた訳ではなかった。
すき間と間詰石がないので、地震の時に築石同士がぶつかることで割れてしまうことがありました。
野面積み、打ち込み接ぎでは割れた間詰石を交換するだけでよかったのですが、切り込み剥の場合は築石の交換になるので大工事になってしまいます。
切り込み接ぎは徳川家康が豊臣家を滅した大坂の陣(1615年)のあとから普及していきました。
切り込み接ぎの石垣が見れる代表的なお城は、金沢城(石川県)、江戸城(皇居)(東京都)。
石を不規則に積んでいく【乱積み】
- 石を不規則に積み上げていく
- 横のラインがまっすぐ通らない
- 強固な石垣を築くには高い技術力が必要
乱積みは石(築石)を不規則に積み上げていく積み方。
「乱層積み」とも。
築石の大小や縦横などを不規則に積んでいくので、石垣表面の横のラインがまっすぐ通っていません。
不規則に積んでいく乱積みで強固な石垣を築くには高い技術力が必要。
そのため技術力のアピールのために乱積みを採用しているお城もありました。
石をキレイに積み上げる【布積み】
- 同じ大きさの石を積んでいく
- 横のラインがまっすぐ通っている
- 見た目が美しい
- 乱積みほどの高い技術は必要ない
布積みは築石の大きさを揃えて積んでいく方法。
「整層積み」とも。
築石の大きさを揃えているので、石垣の横のラインがまっすぐ通っています。
レンガのように積んでいくだけなので、乱積みほどの技術力は必要ありませんでした。
【YouTube】でも解説、石垣の積み方
YouTubeでも解説しています。
動画で学びたい人はこちらも参考にしてみてください。
スポンサーリンク【番外編】その他の石垣の積み方 3つ
ここではちょっと珍しい石垣の積み方を紹介していきます。
- 谷積み
- 亀甲積み
- 玉石積み
谷積み
- 石(築石)の対角線が垂直(縦)になるように積んでいく方法
- 江戸時代後期の新しい石垣に見られる積み方
築石の対角線が垂直になるように積んでいくのが谷積みです。
「落とし積み」とも。
谷積みは江戸時代後半に使われた積み方で、幕末につくられた五稜郭(北海道)や積み直された石垣に採用されていました。
亀甲積み
- 亀の甲らのように六角形に加工した石を使った積み方
- 江戸時代後期の比較的低い石垣に見られる
亀甲積みはその名の通り、亀の甲らのように六角形に加工した石を使っていました。
亀甲積みは荷重が分散されることで崩れにくくなるけど、加工の手間や積み上げるのに高い技術が必要でした。
玉石積み
- 玉石(河原石)のように丸い石を使った積み方
玉石積みは川原にころがっているような丸い石を使った積み方です。
横須賀城(静岡県)では石垣に適した石材が近くで入手できなかったので、代わりに玉石で石垣が作られました。
スポンサーリンク石垣が作られた年代の目安になる【算木積み】
- 石垣の隅(角)で直方体に加工した石を長辺と短辺が交互になるよう積んでいく方法
- 算木積みで石垣の強度が上がる
- 天守台など目立つ部分の石垣に使われている
- 算木積みの発達度合いからおおよその石垣の年代がわかる
石垣では隅(角)が最も崩れやすい箇所で、隅をいかに強固にするかが頑丈な石垣を築けるかを左右していました。
算木積みでは直方体に加工した石を使用し、長辺と短辺を交互に積み上げていきました。
このとき長辺の石が短辺の石だけでなくその隣の石(角脇石)も挟み込むことで、強度を格段にあげることができました。
算木積みは戦国時代後半から見られるようになり、江戸時代初期に完成しました。
なので算木積みに注目することで、その石垣のおおよその年代がわかります。
上の写真は織田信長が築いた安土城(滋賀県)です。
安土城のころから高石垣が築かれるようになっていきましたが、まだこの段階では算木積みは試行錯誤の段階で不完全なものでした。
上の写真は信長の次男・織田信雄が築いた田丸城(三重県)です。
田丸城の算木積みは安土城と比べるとしっかりしていることがわかります。
上の写真は1610年から築城された名古屋城です。
このころには算木積みも完成に近づいていて、姫路城や熊本城などでも高石垣が築かれていました。
名古屋城の算木積みはしっかりに加工された石を使っていて、角のラインがキレイに通っているのがわかります。
上の写真は大坂の陣(1615)のあとに2代将軍・徳川秀忠が作らせた大阪城の天守台です。
算木積みは完成していて、長辺の石が短辺の石と角脇石をガッチリ挟み込んでいて、強度を発揮しています。
こんどお城めぐりをする際には、石垣の算木積みにぜひ注目してください。
【YouTube】でも解説!算木積み
YouTubeでも算木積みを解説しています。
動画で学びたい人はこちらも参考にしてみてください。
【まとめ】お城の石垣の積み方
今回は石垣の積み方を紹介しました。
もう一度積み方をまとめておきます。
- 基本的な石垣の積み方
- 野面積みー自然石をそのまま積む方法
- 打ち込み接ぎー石を加工して噛み合わせを良くした積み方
- 切り込み接ぎー石を完璧に加工してレンガのように積んでいく方法
- 乱積みー不規則に積んでいく方法
- 布積みー規則正しく並べて積んでいく方法
- 番外編
- 谷積み
- 亀甲積み
- 玉石積み
- 石垣の年代の目安になる「算木積み」
いままでお城の石垣を素通りしていたあなた。
次にお城めぐりをする際にはこの記事を参考に石垣に注目してみてください。
石垣と組み合わせることで重要になる「櫓(やぐら)」も解説しています。
櫓も学びたい人は目を通しましょう。
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