お城用語をわかりやすく解説

お城用語をわかりやすく解説 馬出し(うまだし)編

今回は「馬出し(うまだし)」について解説していきます。

前回の記事ではお城の「出入り口」について解説しました。

お城の出入り口は通路を折り曲げたり、門を二重にする、枡形(ますがた)という空間を利用して敵を攻撃する、などの工夫をしていました。

そこで「馬出し」とは、出入り口のすぐ外側(堀をわたったところ)にあって、土塁や石垣、堀でつくっている小さな空間のことです。

「馬出し」があることで、出入り口はより防御力が増し、城内から出撃するための拠点にもなります。

攻撃と防御、両方の機能をもつ馬出しを解説していきます。

この記事では下記↓について解説しています
  • 出撃拠点にもなる馬出しの機能とは??
  • 実際に馬出しはどうやって使われてるの??

では、「馬出し」をみていきましょう。

出撃拠点にもなる馬出しの機能とは??

これから馬出しについて解説していきますが、馬出しがどんなものかわからない人もいると思うのでまずはどんなものか見てみましょう。

篠山城(兵庫県)の馬出篠山城(兵庫県)の馬出

上の写真は篠山城(兵庫県)の馬出です。

「馬出し」とは、出入り口の堀の対岸にあって、土塁や石垣、堀でかこわれた小さな空間のことです。馬出しへの出入り口は側面にあります。

馬出しが出入り口とセットで使われることで、防御にもそして攻撃にも効果を発揮します。

篠山城(兵庫県)の馬出し篠山城の馬出し

馬出しの機能 その1 出撃拠点

馬出の機能その1馬出しの機能その1出撃拠点

馬出しの機能のなかで、一番効果が期待できるのは出撃拠点としての機能です。

馬出しの出入り口は馬出しの側面にあって、堀をはさんで城内からもよく見える場所にあります。

そのため、馬出しの出入り口では城内からの援護射撃をうけやすく、馬出しから外へ出るサポートをしてくれます。

もし、馬出しが攻められていた場合、攻められていない側の出入り口から出撃して敵をはさみ撃ちにすることもできます。攻撃に出ていた部隊が戻ってきたときも、城内からの援護射撃でスムーズに馬出しのなかへ入ることも可能になります。

馬出しと城内との連携で、ただお城にこもって守るだけじゃなく、ときには敵の隙を見て反撃にでることも馬出しは可能にしてくれます。

馬出しの機能 その2 防御

馬出の機能その2馬出しの機能 その2 防御

馬出しは攻撃拠点としてだけではなく、出入り口を守るための拠点としても機能しました。

お城を攻める側から考えたとき、出入り口を突破する場合、馬出しのある出入り口より馬出しのない出入り口を攻めたい。それは出入り口を突破する前に馬出しを奪うことが必要になってくるから。馬出しのある出入り口を突破するためには、2段階の攻撃が必要になってくる。(馬出しを奪う→出入り口の突破)

なので、攻撃側としては簡単な馬出しのない出入り口を優先的に攻めていきたい。

しかし、馬出しを無視した状態で別の出入り口を攻めたとしても、1つの問題が浮上してくる。

「別の出入り口を攻めている間に、馬出しから出てきた部隊に側面やうしろから攻撃されてしまう」こと。

前項でも書いたように、馬出しは出撃と退却がスムーズに行えるので、反撃するタイミングをつねにうかがっています。

そして、攻撃のあと馬出しへと退却する部隊を追いかけてしまうと、馬出し内や城内からの攻撃を受けてしまうさらに損害が増えてしまうことになってしまいます。

お城を攻撃する側としては、馬出しは無視することができないやっかいな存在です。なので馬出しへ攻撃が集中することが予想できます。馬出しで多くの敵を引き付けておくことで、それが馬出しのない別の出入り口を守ることにもつながってきます。

馬出しの機能 その3 とられても大丈夫!

馬出の機能その3馬出しの機能 その3 とられても大丈夫

前項で書いたように馬出しには敵の攻撃が集中してきます。

敵にとっても馬出しはやっかいな存在なので、なんとかしようとガンバってきます。

そこでもし、馬出しが奪われてしまったらどうしましょうか??

馬出しは敵に奪われても大丈夫なんです。すぐに奪い返せるんです!

最初に説明したように、馬出しとは「土塁や石垣、堀でかこわれた小さな空間」のことです。

馬出しを奪ったあと、出入り口を突破しなくてはいけませんが馬出しが小さな空間なので大人数では身動きがとりずらくなってしまいます。しかし、少人数では出入り口を突破することが難しくなる。馬出しという小さな空間に閉じ込められた敵を城内からの射撃で一網打尽にすることがで、馬出しを奪い返しやすくなります。

また、馬出しは堀などでかこわれているため、外側との連携が取りにくいこともお城を攻める側のデメリットになります。

馬出しを効果的に使うには、馬出しと城内の連携をスムーズに行うこと。馬出しからの出撃と退却、馬出し自体の防御、馬出しを奪い返すこと、すべてに城内からの援護射撃が重要になってきます。なので、馬出しにはとくに訓練された部隊が必要になってきます。

実際の馬出しとは??

この項では、実際のお城で馬出しがどういうカタチをしていたのか見ていきましょう。

名古屋城(愛知県)

名古屋城の馬出し名古屋城(愛知県)の馬出し

名古屋城には馬出しは2つあって、「大手馬出し」と「搦手(からめて)馬出し」です。

この名古屋城のような四角い形の馬出しを「角馬出し」と呼びます。

仮に二の丸へ敵が侵入した場合、本丸へ行くためには大手馬出しか搦手馬出しを通るしかありません。

もし大手馬出しが攻められたとき、搦手馬出しから出撃して大手馬出しを助ける。逆に搦手馬出しが攻められたとき、大手馬出しから出撃して助けることができます。大手馬出しと搦手馬出しが相互に助け合うことで、引きこもっているだけじゃない攻撃的な防御力を発揮することができます。

当然、大手馬出しと搦手馬出しが助け合っている間ずっと本丸からの援護射撃がもらえます。

大手馬出しは、明治時代になってから通りにくいということで工事が行われて馬出しというカタチにはなっていません。現在は大手馬出しの東側の石垣と堀が残されています。

名古屋城大手馬出しの石垣と堀名古屋城大手馬出しの石垣と堀

一方、搦手馬出しは馬出しのカタチとして残っています。

現在は石垣の積み直しの工事をしているので規制されていて入ることはできません。(2018年10月現在)

名古屋城搦手馬出し名古屋城搦手馬出し

諏訪原城(静岡県)

諏訪原城(静岡県)の馬出し諏訪原城(静岡県)の馬出し

諏訪原城は武田信玄・勝頼親子と徳川家康が奪い合ったお城です。

諏訪原城の馬出しは前項の名古屋城の馬出しとは違い半円形をしています。

諏訪原城の馬出し諏訪原城の馬出し

このように、半円形の馬出しのことを「丸馬出し」と呼んでいます。

丸馬出しは半円のため死角がなく、角馬出しより守りやすいとされています。そのほか丸馬出しと角馬出しとの違いはありません。

丸馬出しは武田信玄や徳川家康が好んで使っていて、武田信玄の領土だった静岡県や長野県に多く残されています。

古河城(茨城県)

古河城(茨城県)の馬出し古河城(茨城県)の馬出し

古河城の馬出しは角馬出しで、本丸の前面に1つ、二の丸の左右に2つ備えられています。

本丸前面の馬出しには外側(二の丸へ)への出入り口は一つしかありませんし、二の丸の右側の馬出しは、左側の馬出しや名古屋城の馬出しとは違う変わったカタチをしています。

丸馬出しや角馬出しと言っても決まったカタチはなく、馬出しの効果が発揮できればよいのでお城それぞれで地形などを考えながら決めていました。

馬出しの分布

馬出しはとくに東日本で発展していきました。

東日本のお城では武田信玄や小田原北条氏のお城に代表されるように横堀(曲輪(くるわ)をかこうように掘った堀)が発展しました。

本丸などを横堀でグルっと1周かこってしまうと、どこかに出入り口を作らなければ出入りが不便になってしまいます。

しかし、敵もその出入り口を攻めてくるのでいかに守るかが重要になってきます。そこで出入り口をふさぐようにお城から飛び出たカタチの馬出しが考え出されたと言われています。

参考資料