お城用語をわかりやすく解説

お城用語をわかりやすく解説 堀(ほり)編

お城用語をわかりやすく解説 堀(ほり)編

今回は「堀(ほり)」について解説していきます。

堀は地面にミゾを掘って敵が侵入できないようにしたもの。

堀に侵入してきた敵には頭上から弓矢や鉄砲・槍などで攻撃し撃退しました。

堀はお城の防御の基本で、弥生時代の環濠集落から使われていました。

吉野ヶ里遺跡の濠と柵と乱杭吉野ヶ里遺跡の濠と柵と乱杭 Wikipedia「吉野ヶ里遺跡」より

今回は防御の基本「堀」についてみていきましょう。

堀について解説していきます
  • 鉄砲伝来で堀が発達した!?
  • さまざまな堀のカタチとは?
  • 堀を掘る場所も重要だった・堀の活用法
  • 空堀と水堀

鉄砲伝来で堀が発達した!?

まずは堀の歴史をかんたんに見ていきましょう。

堀の歴史は意外と古い

堀の歴史は古く、先ほども書いたように弥生時代の環濠集落から始まります。

環濠集落の周囲をかこう堀は敵の侵入ではなく、害獣などから食料などを守るためだったと言われています。

中世(鎌倉・室町)のお城つくりは曲輪と堀をつくることだけと言ってもよいものでした。

中世のお城は山城がほとんどだったので、堀は水のない空堀がほとんどでした。

このころの堀の幅は約10mもあれば十分に敵の侵入を防ぐことができました。弓矢や槍が主な武器だったので堀幅10mあれば十分で、それ以上幅がひろいと城内からの攻撃が届かなくなってしまうためでした。

その後、鉄砲が伝来し普及することで堀事情が変わってきます。

それまでは幅10mでも十分でした、がしかし鉄砲に対しては短すぎたのです。

鉄砲の射程は弓矢よりずっと長く、それまで堀の幅30m以上必要になってきました。

堀の幅の変化堀の幅の変化

そして堀の幅が広くなることで堀の底ができてきます。

鉄砲の普及によって堀底のカタチにもいろいろな種類が出てきます。(次の項で説明します)

大坂城姫路城名古屋城が築かれた戦国末期・江戸初期になってくると、堀の幅は50〜100mにもなりその背後には高石垣が築かれるようになり、堀を越えて侵入することはより困難になりました。

大阪城の石垣大阪城の堀と石垣

さまざまな堀のカタチとは?

では堀のさまざまなカタチを見ていきましょう!

ここでは4つの堀の種類を紹介していきます。

  • 薬研(やげん)堀
  • 片薬研(かたやげん)堀
  • 毛抜(けぬき)堀
  • 箱堀

薬研(やげん)堀

薬研堀の説明薬研(やげん)堀

薬研堀とは薬研(漢方など薬を粉末にする器具)に似ていることからこう呼ばれています。

薬研薬研

薬研堀はそこがV字になっていて、4つの堀の種類のなかでいちばん少ない労力で掘ることができます。

薬研堀の起源は古く、弥生時代の環濠集落から使われてきたことがわかっています。

戦国時代や山城ではいちばん多いのがこの薬研堀。

堀底がV字のため自由に動くことができず、一度堀へ落ちてしまうと登るのは大変です。

しかし、堀の斜面を急勾配にすると堀の幅がせまくなり、鉄砲がとどいてしまうことがデメリットになります。

片薬研(かたやげん)堀

片薬研堀の説明片薬研(かたやげん)堀

片薬研堀はレ字になった堀で、城外側の斜面がゆるやかになっているのが特徴です。

片側をゆるやかにすることで堀の幅を広くでき、そのため鉄砲がとどかない距離まで広くすることができます。

堀底は薬研堀とおなじで歩きにくく、城内側の斜面を登ることも困難。

毛抜(けぬき)堀

毛抜堀の説明毛抜(けぬき)堀

毛抜堀はU字の堀底をしていることが特徴。断面で見ると毛抜道具に似ていることからこう呼ばれています。

毛抜堀は堀の幅は広くしておきたいが堀の底を道として敵に使わせたくない場合に使われます。

箱堀

箱堀の説明箱堀

堀の幅を広くしていき、両側斜面が離れることで堀底に丸みを作ることが難しくなり、底が平らになったのが箱堀です。

箱堀は近世城郭(織田信長の安土城より後のお城)(大坂城名古屋城広島城など)で使われています。近世城郭に使われている箱堀は大規模で、広島城では堀の幅が100mになるところもあります。

広島城の堀広島城の堀ー水堀だが堀底は箱堀になっている

箱堀のデメリットはそのままでは、敵が堀底を自由に移動できてしまう点です。
このデメリットをなくすために、堀底に畝(うね)をつくったり杭を打って移動の妨げになるようにしていました。

山中城の障子堀山中城の障子堀 Wikipedia「山中城」より

とくに堀底に畝をつくった堀のことを「障子(しょうじ)堀」といいます。

畝を障子のように格子状につくったことから障子堀と呼ばれています。

掘る場所も重要だった、堀の活用方法とは?

堀といっても地面にミゾを掘っただけでは効果を発揮できません。
いかに少ない労力・時間で効果的な場所に堀を掘るかが重要になってきます。

ここではどんな場所に堀を掘っていたのかを見ていきましょう。

堀の活用方法
  • 横堀
  • 竪堀(たてぼり)
  • 畝状竪堀群
  • 堀切(ほりきり)

横堀

横堀はいちばんイメージしやすい堀だと思います。

土塁や石垣にたいして平行に掘った堀のことです。

もっとも基本的な堀の使い方で、本丸や二の丸などの曲輪に侵入しようとする敵を防ぎます。

諏訪原城の横堀諏訪原城の横堀(左側が城外、右側が城内)

竪堀(たてぼり)

竪堀は山の斜面(等高線)にたいして直角に掘られた堀のことです。

竪堀ー篠脇城復元模型(岐阜県博物館)竪堀ー篠脇城復元模型(岐阜県博物館)

竪堀はおもに山城で使われていて、斜面を登ってきた敵の横移動を防ぐという効果がありました。

敵の横移動を防ぐことで、お城の周囲を取り囲まれないようにすることと、敵部隊の横の連携を難しくすることを狙っていました。

畝状竪堀群

畝状竪堀群とは竪堀と土塁をいくつも並べて築いたもの。

竪堀と同じく敵の横移動を防ぐ目的がありました。

畝城竪堀群ー篠脇城(岐阜県博物館)畝城竪堀群ー篠脇城復元模型(岐阜県博物館)

さらに畝城竪堀群にはもう一つの効果があります。

敵が畝城竪堀群を通ってお城を攻めるとき、どうしても登りやすい竪堀のなかを通ることになります。そのときお城を守る側は竪堀の出口を狙って攻撃するだけでよいのです。

敵は竪堀に沿ってまっすぐ攻め上っていくしかないので一直線に並びながらじゃないと登れません。なので守る側は敵を狙いやすくなるのです。

堀切(ほりきり)

堀切とは山の尾根に堀を作って、尾根づたいにお城へ侵入しようとする敵を防ぎます。

堀切ー高天神城(静岡県)堀切ー高天神城(静岡県)

普段は堀切に橋をかけておいて、敵に攻められた時には橋を外していました。

堀切は防御が手薄になりそうなお城の背後に使われることが多かったです。

堀切は1つだけじゃなく、2つ3つと重ねて使うことで敵の侵入をより防ぐことができました。

堀切ー篠脇城(岐阜県博物館)堀切ー篠脇城(岐阜県博物館)

空堀と水堀

堀には、水をはった水堀と水のない空堀があります。

平地でないと堀に水を貯めることができないので、山城に使われた堀のほとんどは空堀でした。

水堀につかわれる水は自然と湧き出た水をつかったり、近くの川や海から水をひいてくることもありました。

名古屋城の水堀名古屋城の水堀

水堀は幅が広ければ広いほど防御力が増していきます。水が張ってあることで甲冑をつけた兵士が堀を渡りきることは難しく、泳いでる間に城内からの攻撃を受けてしまいます。

では、空堀は防御力が劣るのかというと、そういうことはありません。

空堀は山城だけではなく大坂城名古屋城など平地の大きなお城にも使われています。

大坂城名古屋城での空堀は堀底が深く飛び降りることはできないし、まして甲冑や槍を身につけたまま登ることは困難です。そして堀底では身を隠すものがないので城内からの攻撃にたいして無防備になってしまいます。

古くからある空堀といっても防御力で水堀に劣っているわけではなく、大規模な空堀をつくることで防御力を高めていました。

名古屋城の空堀名古屋城の空堀

参考資料