お城の堀にはどんな役割があるの?
堀にはどんな種類があるのか知りたいな!
今回はお城の「堀」の疑問に答えていきます。
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お城の堀というと水が溜められた堀(水堀)を想像する人が多いかもしれません。
しかしながらお城の堀と言っても、さまざまな種類、役割があります。
今回は堀の種類や役割などを写真・図などを使って解説していきます。
- 堀の役割
- 堀の歴史
- 堀の種類5つ
- 堀の底の形5つ
- 天然の堀として利用された河川
- 堀がオススメのお城5選
では解説していきます。
Contents
お城の堀の役割と歴史
堀の役割は「敵の侵入を防ぐこと」
お城を攻め落とそうとする敵は本丸を目指して、移動しながら攻撃してきます。
堀の1番の役割は「敵に自由に移動させないこと」。
迫ってくる敵を堀が足止めして、そこを城内から弓矢や鉄砲、槍などで攻撃しました。
なので、「堀はお城の防御の基本」です。
堀は弥生時代から使われていたお城の基本パーツ
堀が使われ始めたのは古く、弥生時代から。
最初は集落の周りを堀で囲んでいて、害獣から集落や田んぼ・畑を守るためでした。
弥生時代以降は、古墳時代の豪族居館や平安時代の城柵、鎌倉・室町時代の武士の屋敷でも堀は使われ続けています。
このように堀はお城の基本パーツの1つでした。
鉄砲が変えた堀の大きさ
戦国時代に海外から日本へ鉄砲(火縄銃)が伝えられました。
鉄砲が伝わって合戦の主力武器に鉄砲がなるにつれて、堀は鉄砲に対応するために幅が広くなっていきます。
鉄砲は弓矢より射程(攻撃できる距離)が長く、従来の堀の幅(10m)では足りず30m以上の幅を持つ堀が作られるようになりました。(最終的に50〜100mの堀が作られることに)
堀の幅が変わったことで、堀の底の形も変わりました。
V字の形の「薬研(やげん)堀」は深い堀を掘ることができたけど、対岸との距離が近く鉄砲の防御には不利でした。
そこで堀の幅を広げたことで、堀の底が平らな「箱堀」が登場。
箱堀は深さはなくても、対岸との距離を大きくとることができました。
堀底の形はのちほど解説します。
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ここでは堀の種類を5つ紹介します。
- 空堀
- 水堀
- 竪堀
- 堀切
- 横堀
堀の基本形【空堀】
空堀(からぼり)は山城・平山城・平城とどのタイプのお城でも使用される堀の基本です。
とくに山城では大量の水を確保できないので水堀にできません。なので山城の堀はほとんどが空堀です。
中世(鎌倉〜室町・戦国)のお城は山城がメインだったので、この時期は空堀が主流でした。
戦国時代の山城では敵の侵入を防ぐために、いろんな種類の空堀が使われていました。
(このあと順に紹介していきます)
広大な【水堀】は敵の侵入を許さなかった
空堀に水を入れると水堀になります。
戦国末期〜江戸時代初めに平山城、平城が普及したことが、大規模な水堀を誕生させています。
最大100mを超える水堀も造られていて、堀を渡って侵入することは不可能でした。
水堀を渡ろうと泳いだり舟を使っても、動きが鈍くて城内から狙い撃ちにされます。
また水堀では水鳥を飼っておくと良い。
なぜなら忍者など侵入者がいたら水鳥が騒ぐので、警報の代わりになりました。
気になる水堀の深さですが、それほど深くする必要はなく、足が届かないくらいの深さがあれば十分でした。
そのため水堀の水深は2〜3mになっています。
敵の横移動を防いだ【竪堀】
竪堀(たてぼり)とは山や丘の斜面にタテ方向に掘られた堀のこと。
斜面を登ってくる敵の横移動を防ぐ目的がありました。
竪堀を発展させて、竪堀と土塁を交互に並べることで畝状にした堀を「畝状空堀群」といいます。
畝状空堀群にはまると、敵は横移動できずに竪堀を真っ直ぐ登るしかありません。
守る側は真っ直ぐ登ってくる敵を狙い撃ちするだけなので、防御しやすかった。
尾根を登ってくる敵を足止めした【堀切】
堀切とは敵の侵入路になる山の尾根を切り欠いた空堀のこと。
堀切には尾根を登ってくる敵の侵入を防いだり、曲輪同士の独立性を高めたりする目的がありました。
堀切の両サイドを竪堀につなげることで、堀切で足止めされた敵が山の斜面へ移動するのを防いでいました。
またより防御力を高めるために、堀切を二重、三重と連続させている山城もあります。
曲輪の周囲に掘られた【横堀】
横堀とは曲輪の周囲に沿って掘られた堀のこと。
侵入しようと曲輪に迫ってきた敵はまず横堀で足止めされました。
平城の堀はすべて横堀です。
平城は山城のように地形を活かした防御ができないので、横堀を掘って防御力を高める必要がありました。
広大な水堀も横堀の一つで、幅を広げることで曲輪の独立性を高めています。
堀の底の形5つ
ここでは堀の底の形を5つ紹介します。
- 薬研堀
- 片薬研堀
- 毛抜堀
- 箱堀
- 障子堀(堀障子)
V字に掘られた【薬研堀】
薬研堀(やげんぼり)とはV字に掘られた堀のこと。
堀の底は幅が狭くて自由に動けないのが薬研堀の特徴です。
薬研とは薬を調合するときに使われていた道具で、形が似ていることから名前がつけられました。
薬研堀は最も効率的に掘ることができる堀で、掘ったあとの土も少なくてすみます。
また弥生時代の環濠集落から使われていたほど、古くからある堀底の形。
デメリットは堀幅が狭いこと。対岸からの攻撃が届いてしまうのが難点でした。
レ字に掘られた【片薬研堀】
片薬研堀とはカタカナのレ字になっている堀のこと。
城内側の壁が急で、城外側の壁の角度が緩くなっているのが特徴です。
薬研堀同様に、堀底は歩きにくい。
薬研堀とは違って対岸との距離を大きく取れるため、敵の攻撃が届きにくくなっています。
U字に掘られた【毛抜堀】
毛抜堀とは底が丸みがあるU字になっている堀のこと。
毛抜の道具に形が似ていることから名前がつけられました。
毛抜堀は底が丸いので壁が登りにくい。
また毛抜堀は堀の幅は確保したいけど、堀底を通路として使いたくないときに造られます。
そこが平らな【箱堀】
箱堀とは底が平らで台形を逆さにした断面をしている堀のこと。
箱堀は広い堀幅を確保できるので、敵の攻撃が届きません。
江戸時代初めに作られたお城の大規模な堀は箱堀がほとんど。
一方戦国時代の山城でも箱堀は使われていて、箱堀にすることで堀底を通路として利用していました。
箱堀に仕切りを作った【障子堀】
障子堀(しょうじぼり/堀障子)とは箱堀の底に敵が移動できないよう仕切りを設けた堀のこと。
この仕切りが障子の枠(桟/さん)に見えることから名前がつけられました。
また堀底をタテに仕切っただけのものを「畝堀(うねぼり)」といいます。
さらに障子堀に泥を入れて、敵の足がとられるようにもしていました。
スポンサーリンク天然の堀として利用された河川
河川がお城の近くを流れていた場合(河川の近くに築城する場合も)、河川を堀と考えて防御に活用していました。
またお城の防御のために川の流れを変えることさえありました。
例えば彦根城(滋賀県)の近くを流れる芹川(せりかわ)。
この川は彦根城が築城されたときに、川の流れを変える土木工事が行われています。
芹川の流れを彦根城の西側に変えることで、西からやってくると想定していた敵に備えていました。
堀がオススメなお城5選
ここでは堀ががオススメなお城を5つ紹介します。
- 大阪城(大阪府)
- 山中城(静岡県)
- 弘前城(青森県)
- 松本城(長野県)
- 玄蕃尾城(福井県・滋賀県)
敵をまったく寄せつけない【大阪城の水堀】
大阪城の二の丸南側の大きな水堀は圧巻の一言。
幅70m長さ600mに及ぶ水堀の規模は全国1,2を争います。
幅70mというのは敵の攻撃を防ぐことができるけど、逆に城内からの攻撃も届かないほどの広さ。
大阪城は台地の北端に造られたお城で、攻めることができるのは南側だけです。
実際に大坂の陣で徳川軍は南側から大坂城を攻めていきました。
大阪城を作り直した徳川幕府は南側に広大な水堀を築くことで、大阪城をより完璧なものにしています。
障子堀がよく整備されている【山中城】
山中城は戦国大名・北条氏の築城技術の集大成と言われています。
そんな山中城の特徴の一つが「障子堀」。
山中城の堀の多くが障子堀で造られていて、主要な曲輪を守っています。
障子堀を模した障子堀ワッフルも販売されています。
堀がすべて残る【弘前城】
明治時代に廃城令が出された後、全国で天守や櫓、門などお城の建物は取り壊されていきました。
堀も例外ではなく、市街地化の邪魔になったので多くの堀が埋められています。
本丸周囲の堀のみを残すお城が多いなか、弘前城では本丸、二の丸、三の丸を囲む三重の堀がすべて残ってる珍しいお城です。
三重になっている堀をそれぞれ比較してみるのも面白いです。
水堀に天守が映える【松本城】
現存天守がある松本城。
水堀に松本城天守が反射している写真を見たことがある人は多いのではないでしょうか?
松本城では本丸の堀と、二の丸堀、総堀の一部が残るのみ。
それでも水堀に映る天守が一番美しいのは松本城でしょう。
天守と水堀のセットで写真の撮りがいのあるお城の一つです。
織田軍の築城技術を伝える【玄蕃尾城】
玄蕃尾(げんばお)城とは、織田信長の家臣・柴田勝家が豊臣秀吉と争った賤ヶ岳の戦いで本陣にした山城です。
この合戦で勝家・秀吉両軍は多数の砦や山城を築いて争っていました。
その中でもとりわけ玄蕃尾城は技巧的で注目されています。
敵が直進してくるのを防ぐため空堀や土塁を巧みに使って、通路を複雑に折り曲げているのが特徴の一つです。
このお城は合戦の後に放置されていて、その後に手を加えた人はいません。
なので玄蕃尾城は織田軍の築城技術を伝えるお城で、国の指定史跡にもなっています。
お城に行ってさまざまな堀に注目してみよう!
今回は「お城の堀」を解説しました。
お城の堀といってもさまざまな堀がありました。
もう一度今回の内容をまとめておきます。
- 堀の役割は敵の侵入を防ぐこと
- 堀は弥生時代から使われていたお城の基本パーツ
- 鉄砲が堀の幅を広くした
- 堀の種類5つ「空堀」「水堀」「竪堀」「堀切」「横堀」
- 堀底の形5つ「薬研堀」「片薬研堀」「毛抜堀」「箱堀」「障子堀」
- 河川の流れを変えて堀として利用していた
お城めぐりをするときはこの記事を参考にして、ぜひ堀に注目してください。
この記事が分かりやすかったらシェアしてくれるとうれしいです。