お城用語をわかりやすく解説

5分で読める!お城を楽しむための【縄張と基本パターン3つ】を解説

お城の縄張
お城用語でよく聞く「縄張(なわばり)」とは何のこと?
縄張にはパターンがあるの?
実際のお城の縄張はどうなっているの?

今回はこのような「縄張(なわばり)」にまつわる疑問について解説していきます。

この記事を書いているのはこんな人

ゆうき・お城クリエイター
  • 本ブログで100記事以上を執筆
  • お城の面白さをみんなともっと共有したい思いからブログ・YouTube・Twitterでお城の情報・知識を発信しています。

縄張を知っておくことはお城めぐりがより楽しく面白くなるので重要です。

この記事では、図や絵、写真を使って解説していきます。

今回紹介する内容

・お城用語でよく聞く縄張とは?

    縄張の基本パターン3つ

  • 連郭式
  • 梯郭式
  • 輪郭式
    実際のお城の縄張7つ

  • 小谷城(滋賀県)
  • 高遠城(長野県)
  • 二条城(京都府)
  • 大垣城(岐阜県)
  • 新発田城(新潟県)
  • 名古屋城(愛知県)
  • 姫路城(兵庫県)

・縄張図が載っているオススメ本4つ

今回紹介するお城はわずかですが、2つと同じ縄張を持つお城はありません。

観光で立ち寄ったお城や地元のお城など、さまざまなお城の縄張を比べてみることで一つ一つのお城の特徴がわかるようになります。

この記事の最後では縄張図が載っているオススメ本も紹介しているので参考にしてください。

では解説していきます。

Contents

【基礎知識】縄張とはお城の基本設計!

「縄張とは何か?」を知っておくことはお城を知って楽しむ上で超重要です。

なぜなら「縄張」とはお城の基本設計のこと。

曲輪(本丸や二の丸)をどう配置するのか、堀や土塁、石垣はどこに作るのか、出入口の形はどうするのかなど、お城の基本設計を「縄張」といいます。

縄張はそのでき次第でお城がちゃんと機能するかが決まる重要な工程でした。

なので、縄張りとは何かを知っておくことはお城を知って楽しむ上で重要なのです。

縄張を描いた縄張図とは?

お城の縄張を描いたものを縄張図といいます。

本来堀や土塁など凹凸があるお城を平面図に描いているので、初めてみる人にはわかりにくいかもしれません。

しかし縄張図に慣れてくると、出入口の工夫や土塁、堀の大きさなどが読み取れるようになります。

縄張図をもってお城めぐりをするとお城全体像が把握しやすくなり、どう考えてお城の防御を考えていたのかなど、お城に対する理解がより深まります。

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縄張の基本パターン3つとその特徴

ここからは縄張の基本的なパターンを紹介します。

この3つのパターンは、江戸時代の学者がさまざまなお城の縄張を調べて単純化しパターンかしたもの。

なので、これから紹介するパターンそのままのお城がある訳ではありません。

それでもそれぞれのパターンの特徴を知っておくことで、実際のお城の縄張も理解しやすくなります。

  • 曲輪を一直線に並べた【連郭式】
  • 本丸を隅に置いた【梯郭式】
  • 本丸を中心に置いて四方すべてを囲った【輪郭式】

曲輪を一直線に並べた【連郭式】

縄張ー連郭式縄張ー連郭式
  • 本丸とその他の曲輪を一直線に並べた形
  • 本丸の露出している面が多く、守りが手薄になりがち
  • 山の尾根に築く山城や平山城に多く見られるパターン

本丸とその他の曲輪を一直線にならべた形が「連郭式(れんかくしき)」

本丸の3方向が露出しているため、守りが手薄になりがち。

なので防御するために帯曲輪・腰曲輪や堀切が作られることが多いです。

このパターンは山の尾根に築く山城や平山城、比較的新しい平城によく見られます。

本丸を隅に置いた【梯郭式】

縄張ー梯郭式縄張ー梯郭式
  • 本丸を隅に置いて2方向や3方向を二の丸が囲む形
  • 本丸が露出している面は河川やガケで守っていた
  • 山城・平山城に多いパターン

本丸を隅に置いて2方向や3方向を二の丸が囲む形が梯郭式(ていかくしき)」

本丸が偏った位置にあるので、本丸が露出している面は河川やガケなど自然地形で守られていました。

お城の防御に自然地形を利用することが多く、山城・平山城に多いパターンです。

本丸を中心に置いて四方すべてを囲った【輪郭式】

縄張ー輪郭式縄張ー輪郭式
  • 本丸を中心に置いて四方すべてを囲った形
  • お城の規模が大きくなりがち
  • 四方に対して均等に防御できる
  • 平城に多いパターン

本丸を中心にして、その周囲すべてをほかの曲輪で囲った形が「輪郭式(りんかくしき)」

本丸から四方へ曲輪を作っていくので、お城の規模が大きくなる傾向があります。

四方に対して均等に防御できる反面、二の丸が狭くなりがちです。

お城の規模が大きくなるため広い土地が必要で、輪郭式は平城に多く見られます。

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実際のお城の縄張 7つ

ここからは実際のお城の縄張を江戸時代の絵図や写真で見ていきます。

実際の縄張は、さきほど紹介した3つのパターンを組み合わせです。

3つのパターンにとらわれず、それぞれの縄張が自然地形や堀・土塁を使っていかに防御の工夫をしているのかを見ていくと、お城への理解がより深まっていきますよ。

連郭式の【小谷城の縄張】

小谷城(滋賀県)小谷城(滋賀県)

滋賀県長浜市にある小谷城。

小谷城は織田信長の妹婿・浅井長政の居城としても有名なお城です。

小谷城は山の尾根に築かれたお城で、「桜馬場、大広間、本丸、中丸、京極丸、小丸・・・」と曲輪が一直線に並んでいるのがわかります。

そして曲輪の側面に帯曲輪を設けることで、防御力をUPさせています。

なので、小谷城の縄張は「連郭式」です。

梯郭式の【高遠城の縄張】

高遠城の縄張高遠城の縄張

長野県伊那市にあって桜の名所としても有名な高遠城。

高遠城の縄張は本丸を隅に置いて、その周囲を二の丸・三の丸が囲っているのがわかります。

そして本丸の空いている面には小さい曲輪を作っていたり、その先はガケ、川になっていて防御も考えられています。

なので高遠城の縄張は「梯郭式」です。

輪郭式の【二条城の縄張】

二条城の縄張二条城の縄張

京都府京都市にある二条城。

国宝の御殿が残っていて、大政奉還が行われた江戸幕府最後の場所としても有名です。

二条城の縄張は本丸を二の丸がぐるっと囲んでいるのがわかります。

なので二条城の縄張は「輪郭式」です。

連郭式+輪郭式の【大垣城の縄張】

大垣城の縄張大垣城の縄張

岐阜県大垣市にある大垣城。

大垣城の本丸・二の丸は横に並べた連郭式です。

そしてこれらの曲輪を三の丸がぐるっと囲んでいて輪郭式になっています。

なので大垣城の縄張は「連郭式+輪郭式」です。

輪郭式+連郭式の【新発田城の縄張】

新発田城の縄張新発田城の縄張

新潟県新発田市にある新発田(しばた)城。

新発田城の本丸は二の丸に囲まれていて、この部分は輪郭式。

そして二の丸は三の丸と並んでいて連郭式になっています。

なので新発田城の縄張は「輪郭式+連郭式」です。

輪郭式+梯郭式の【名古屋城の縄張】

名古屋城の縄張名古屋城の縄張

愛知県名古屋市にある名古屋城

名古屋城では本丸の周囲を西の丸・御深井丸(おふけまる)・二の丸が囲っていて、この部分は輪郭式になっています。

そしてその外側を三の丸が2方向を囲っているので梯郭式。

なので名古屋城の縄張は「輪郭式+梯郭式」です。

3つの基本パターンに当てはまらない【姫路城の縄張】

姫路城の縄張姫路城の縄張

兵庫県姫路市にある世界遺産・姫路城。

姫路城の縄張はちょっと複雑で3つの基本パターンのどれにも当てはまりません。

天守のある天守曲輪を中心に、その周囲に「備前丸・乾曲輪・二の丸・・・」が配置されているのがわかります。

戦国時代、姫路城は豊臣秀吉の軍師・黒田官兵衛のお城でした。

官兵衛のあと、秀吉、池田輝政が姫路城を拡張しています。

姫路城は拡張を重ねた結果、複雑な曲輪の配置になったと考えることができます。

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【まとめ】お城の縄張

今回は「縄張」を紹介しました。

縄張とは曲輪をどう配置するのか、堀や土塁・石垣をどこに作るのかといったお城の基本設計のこと

縄張については上記のことだけ覚えてくれたらOKです。

その上でいろんなお城を巡って、お城の縄張を比較してみてください。

そうするとお城の特徴や他との違いなどがわかるようになってきて面白いですよ。

この後に縄張図が載っているオススメ本を紹介するので参考にしてください。

最後にもう一度内容をおさらいしておきます。

・縄張とはどう曲輪を配置するかなど、お城の基本設計のこと

・縄張の出来次第でお城が機能するかどうかが決まる重要な工程

    縄張の基本パターンは3つ

  • 連郭式
  • 梯郭式
  • 輪郭式
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縄張図が載っているオススメ本 4冊

東海の名城を歩く 岐阜編 吉川弘文館

この本は各地域のお城を縄張図付きで、お城の歴史・構造などを解説してくれています。

100名城や歴史ドラマにも出てくるお城から、こんなお城もあったんだというようなマイナーなお城まで多く掲載。

東海のほかにも「近畿、東北、甲信越、沖縄」などがあり、その中で〇〇県編と分かれています。

自分の住んでいる地域、これからお城めぐりをしてみようという地域の本を買って、参考にしてみてはいかがでしょうか?

図説日本の城郭シリーズ13 明智光秀の城郭と合戦 戎光祥出版

こちらの本はテーマに沿ってお城の構造や歴史とともに縄張図を解説しています。

明智光秀のほかにも、「戦国信濃の城郭」「尼子氏の城郭と合戦」などさまざまなテーマでお城と縄張図を紹介。

好きな戦国大名や武将などテーマを決めてお城めぐりをしたいときに、最適な本の一つです。

隠れた名城 日本の山城を歩く 山川出版社

この本はTVの歴史番組や大河ドラマの時代考証でもおなじみの小和田哲男先生が監修している一冊。

全国の山城を厳選して20城を紹介しています。

本のサイズも大きく、全ページがカラーなので縄張図も見やすいです。

また写真とともに注目ポイントも解説してくれているので、お城めぐりをしていて見逃さないように配慮してくれています。

大きな縄張図で歩く!楽しむ! 完全詳解 山城ガイド Gakken

この本はA4サイズ(見開きA3サイズ)で大きく、全ページカラーで縄張図がとても見やすいのが特徴。

また復元イラストも載っていて、戦国時代当時のお城と現在の山城跡とを比べながら散策するのも面白いです。

ほかにも山城の歴史や守り方、縄張図の読み方・歩き方も解説してくれているので初めて山城へ行く人にオススメの1冊です。

参考資料