土塁のメリットやデメリット、石垣との違いを知りたいな。
今回は「土塁」にまつわる疑問に答えていきます。
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土塁というと土を持っただけで「石垣に比べると大したことない」ように見えるかもしれません。
しかし土塁は古代から使われてきたお城の基本的なパーツの1つで、石垣にはないメリットもありました。
この記事では写真や図などを使いながら土塁を解説していきます。
- 土塁の役割
- 土塁の作り方と構造
- 土塁の使い方3つ
- 土塁のメリット・デメリット
- 土塁と石垣の違い
- 土塁がよく残るお城3選
今回紹介する土塁の特徴などを覚えておいて、次にお城めぐりをするときに土塁に注目してみてください。
では「土塁」を解説していきます。
Contents
お城の基本パーツの1つ【土塁の役割】
「城」という漢字が「土より成る」と表しているように、土を堤防のように持った防御施設が「土塁(どるい)」です。「土居(どい)」「土手」とも呼ばれていました。
土塁は本丸や二の丸などの曲輪の縁に作られ、城内部への敵の侵入を防ぐ役割があります。
古くは弥生時代の環濠集落(吉野ヶ里遺跡など)でも使われていた、お城の基本パーツの1つ。
近世(織田信長のころ)になってお城に石垣が多く用いられるようになるまでは、土塁が主な防御方法でした。
スポンサーリンク土塁と堀は密接な関係!【土塁の作り方と種類】
堀を掘った土で作られた土塁
土塁を作るためには土を盛らなくてはいけません。しかし他から土を運んでくるとなると重労働です。
そこで土塁のための土は、「堀を掘ったときに出る余った土(排土)」を再利用していました。
余った土を再利用することで、堀を掘った後の余った土を外へ捨てにいかなくて良いし、土塁のための土を運んでこなくて良くなります。
土を運搬する必要がなく効率的に築城できました。
このように土塁と堀は切っても切れない関係だったのです。
土塁は45°まで【土塁の傾斜角度】
土塁でも石垣でも敵の侵入を防ぐために重要なのは「傾斜の角度」です。
土塁の場合、傾斜の角度は45°が限界で、石垣ほどに急勾配にすることはできません。
急勾配にすると、大雨で崩れやすくなるためです。
また勾配を緩くしすぎると敵が登りやすくなってしまうので、45°が最適とされています。
土塁の各部分の名前
土塁の断面を台形とイメージしてもらって、その台形の上辺を「褶(ひらみ)」底辺を「敷(しき)」斜面が「法(のり、法面)」です。
そして土塁上に柵や塀を建てた場合、柵の内側が「武者走り」外側を「犬走り」と呼んでいます。
犬走りとは犬が走れる程度の幅しかないという意味だそうです。
武者走りと犬走りでは、武者走りのほうが幅が広くなっています。敵が土塁を登ってきたときに犬走りが万一足場にならないようにするためです。
土塁に登るために作られた【雁木】
土塁の上で戦うために、城内側から登るために作られた坂や階段を「雁木(がんぎ)」といいます。
雁木にも種類があって、「合坂」と「重ね坂」があります。
合坂は2つの雁木を向かい合わせてV字状に作ったもの。
重ね坂は雁木を並行して作ったものです。
多くの兵士が登り降りするためには、重ね坂が有効だっと言われています。
のちに土塁の内側すべてを階段にして、どこからでも昇降可能にしたお城もありました。
土塁の種類2つ
土塁にも作り方や工夫で種類を分けることが可能。
ここでは「たたき土居」と「芝土居」を紹介します。
基本的な土塁【たたき土居】
最も基本的な土塁が「たたき土居」。
たたき土居は土に粘土や小石(ジャリ)を混ぜて、叩いて突き固めて作りました。
作り方には2通りあって、土と粘土・小石を混ぜ合わせて作ったものと、土の層と小石の層が交互になるよう作ったものです。
たたき土居の表面は土のままですが、関東ローム層のように火山由来の成分(火山灰など)が多く含まれていてる地域の土塁は滑りやすく、登るのは困難でした。
また、たたき土居の傾斜は45°が限界です。
土塁に芝生を植えた【芝土居】
名前のとおり土塁の斜面に芝生を植えた土塁が「芝土居」。
基本的な作り方はたたき土居と一緒です。
芝生が根をはることで、表面の土が崩れるのを防いでいました
芝生のおかげでたたき土居より急勾配にすることができ、60°まで傾斜をつけることができたといいます。
芝生が伸びていると敵がそれを掴んで登ってくる恐れがあるため、定期的に短く刈りそろえておく必要がありました。
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ここでは土塁の使い方を3つ紹介します。
鉄砲の弾よけとして
土塁の使い方の1つは「鉄砲(火縄銃)の弾よけ」として。
土塁は厚みがあるので、鉄砲の弾は貫通しません。
鉄砲に対する最適な防御方法の1つが土塁で、土塁に隠れて安全に弾込めすることができました。
戦うための足場として
土塁は幅があるため、上に乗って移動が可能でした。
土塁を足場として使い、敵より高い位置から有利に攻撃することができます。
また高さがあることで弓や鉄砲でより遠距離まで攻撃できました。
城内の仕切りとして
土塁は曲輪の縁に作って敵を侵入させないだけじゃなく、城内の空間の仕切りとしても使われていました。
例えば大名や城主のお屋敷のまわりを土塁で囲むことで、身分・権威の差を表していました。
小牧山城の麓にある織田信長館跡は周囲を土塁で囲われていて、信長と家臣との身分の差を示しています。
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ここでは土塁のメリットとデメリットについて解説します。
土塁のメリットは短期間・低コストで作れること
土塁最大のメリットは短期間・低コストです。
土塁は石垣のように専門の技術者がいなくても作れますし、築城場所で堀を掘ったときの土を再利用して作るので資材を調達する必要がありません。
石垣を築くとなると石材の運搬・積み上げに多くの労力が必要ですが、土塁は少人数でも作ることができました。
戦国時代の弱小大名もたくさんの人員を動員できない中、山城に土塁を築いています。
また土塁は鍬(くわ)などどこにでもある農機具で作れ、専用の道具が必要なかったこともメリットの一つです。
土塁のデメリットは日々のメンテが必要なところ
土塁のデメリットの一つは日々のメンテナンスが必要なところ。
日本のように雨や台風が多いところだと、土でできている土塁は崩れやすくなります。
また芝土居は芝生を定期的に刈りそろえなければいけませんでした。
ほかにも土塁は斜面の傾斜が石垣よりも緩く、幅が広くなってしまいます。そのため城内の面積を土塁が余分に使ってしまうので、そのほかの施設(御殿など)に使える面積が限られてしまいます。
のちほど詳しく解説しますが、石垣のように土塁上に大きな建物(天守や櫓)などを建てることができないのもデメリットの一つでした。
土塁と石垣の違いは2つ
土塁と石垣の違いには何があるでしょうか?
その1【大きな建物が建てられるかどうか】
大きな違いの一つは、大きな建物(天守や櫓など)を建てることができるかどうかです。
石垣は重量のある天守などの建物を支えることが可能だけど、土塁では雨が降って地面がゆるくなったりすると建物の重みで崩れる恐れがありました。
また石垣では端ギリギリまで建物を建設可能だけど、土塁では斜面から少し離して建てる必要があります。
「大型の建物を建設しその中で雨に弱い鉄砲(火縄銃)を使用できる」というのが、石垣のメリットの一つで土塁にはないものでした。
その2【作る手軽さ】
土塁と石垣の違い二つ目は「手軽さ」です。
石垣を作るには石材の調達・加工が必要で、積み上げるのも専門の技術者が必要でした。そのため多くの労力・資金・時間が必要になります。
一方土塁は誰でも短期間・少人数で作れ、専門の技術や道具も必要ありません。農機具で作れます。この手軽さが土塁のメリットです。
野外での合戦(野戦)やお城を攻める側の時、大将・大名がいる本陣などを守るために土塁が用いられます。
合戦の本陣(陣城という)ようにもともと短期間の使用しか考えていない時は石垣ではなく、土塁の手軽さが優れています。
また土塁のメリットで解説したように土塁は低コストで作れるので、三の丸などの大きな曲輪で外周が長くなるときは土塁が作られています。
たとえば名古屋城の三の丸。名古屋城は石垣のお城として有名ですが、三の丸はとても大きいため石垣にするには大きなコストがかかってしまいます。
そのため名古屋城では三の丸のみ土塁を用いています。
土塁と石垣のハイブリッド【鉢巻腰巻石垣】
土塁の良いところと石垣の良いところを組み合わせたものがあります。
それが「鉢巻石垣」と「腰巻石垣」です。
鉢巻(はちまき)石垣とは土塁の上部を石垣にしたもの。
土塁の上に石垣を作ることで、石垣の上に建物(櫓など)を建てることが可能になりました。
もう一つ、腰巻(こしまき)石垣は土塁の下部を石垣にしたもの。
腰巻石垣には水堀の水で土塁が削られてしまうのを石垣で防ぐ目的がありました。
土塁と石垣をハイブリッドにすることで、資材(石材)・労力・時間の節約になっている上、防御力も総石垣と変わりません。
急いで築城したい時(彦根城)や石材が入手困難な地域(関東・東北)のお城などで鉢巻腰巻石垣が用いられていました。
土塁がよく残るお城3選
ここでは土塁がよく残るお城跡を3つ紹介します。
三の丸に大土塁が残る【名古屋城】
石垣のお城として有名な名古屋城。
お城の中心部である本丸や二の丸などはすべて石垣で囲われています。
そして二の丸より外側の三の丸は土塁を使用。
なぜ三の丸だけ土塁なのかというと、三の丸はその他の曲輪(本丸や二の丸など)すべての面積より広いためです。
広大な三の丸をすべて石垣にするには資金や時間がかかり過ぎてしまうために、土塁が採用され、出入り口部分にのみ石垣が使用されました。
日本一大きな土塁が残る【江戸城】
現在は天皇家の住まいとして使われている江戸城。
江戸城の中心部は本丸や二の丸・三の丸の東側と、西の丸と紅葉山・吹上御所の西側に分けることができます。
本丸を中心とする東側(東京駅側)はすべて石垣造り。
反対に西側は日本で一番大きな土塁で作られています。
半蔵門から南の桜田濠は土塁の頂上から反対側までの幅が約200mもあり、土塁も水堀も日本最大クラスの大きさを誇っています。
またこの土塁は上部と下部を石垣にした鉢巻腰巻石垣です。
桜の名所に残る土塁【弘前城】
東北・関東唯一で最北の現存天守がある弘前城。
弘前城は本丸のみが石垣で囲われていて、そのほかの二の丸や三の丸などは土塁で囲われています。
さくらまつりでも有名な弘前城は、本丸・二の丸・三の丸の堀がほぼ完全に残されている貴重なお城跡です。
そして土塁と水堀・桜のコラボレーションが見どころの一つです。
お城の土塁 まとめ
今回はお城の基本パーツの一つ「土塁」を紹介しました。
- 堀を掘ったときの土で土塁を作る
- 土塁の傾斜は45°まで
- 土塁のメリットは手軽さ
- デメリットは石垣のように大きな建物が建てられないこと
- 土塁と石垣をハイブリッドした「鉢巻腰巻石垣」がある
土塁は石垣と違って目立たない存在かもしれませんが、弥生時代から江戸時代まで使われ続けていることから有効なお城の防御の一つです。
ぜひ次回お城めぐりをするときには、この記事を参考に土塁にも注目してみてください。
土塁の他にもお城にパーツ・用語を解説しているので、こちらも読んでみてね。