今回は「城柵(じょうさく)」について解説していきます。
歴史の授業では「坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)が征夷大将軍に任ぜられ、東北地方における大和朝廷が治める地域を拡大していった」と習いました。
では、大和朝廷が東北地方を治めていくときに、お城(城柵)はどのような役割を果たしたのでしょうか?
城柵をみていくことで、東北地方の歴史もより理解しやすくなります。
では、「城柵」についてみていきましょう。
Contents
城柵(じょうさく)とは?
「城柵(じょうさく)」とは7世紀半ば〜9世紀初め(650〜800、飛鳥・奈良・平安時代)にかけて、新潟県から東北地方に築かれたお城です。
当時近畿地方を中心に勢力をもっていた大和朝廷。
東北地方をしっかり治めることと、治める地域の拡大のために「城柵」を築いて行きました。
城柵の役割
城柵の役割とは、東北地方を「しっかり治めること」と「治める地域の拡大」です。
「しっかり治める」と言っても、「東北地方の住民が暮らしやすいよう」にということではなく、大和朝廷に都合がいいように「しっかり治める」ということでした。
これまでの大和朝廷と東北地方の関係は、交易・貿易をする関係であっても、支配・被支配という関係ではありませんでした。そこへ大和朝廷が城柵を作ることで東北地方を大和朝廷による支配を浸透させようとしました。
そのために支配に抵抗する反乱が起き、城柵が襲われ燃やされるという事件も起きています。(宝亀の乱・伊治呰麻呂の乱、780年)
「しっかり治める」にはもう一つ目的があって、それは「北海道や東北北部との交易」です。
大和朝廷に従わない東北地方の人々を蝦夷(えみし)と呼んで城柵を築き支配しようとするだけではなく、蝦夷と交易・貿易もしていました。
大和朝廷側にも北海道・東北北部の特産品を手に入れるという経済的なメリットもあったためです。
城柵で蝦夷を接待したり、特産品の取引など交易の場所(市場)としての役割もありました。
もう一つの役割「治める地域の拡大」のために、城柵は軍事施設という面も。
後に説明しますが、高い塀を築き、やぐらを建てることで城柵を守っていました。
「治める地域の拡大」のために城柵は新潟県をはじめに、北上するように築かれていきました。
また「柵戸(さくこ)」と呼ばれる移民(関東や東海地方から)を東北地方へ連れていくことで、城柵や村の建設、耕作地の拡大させていきました。
城柵の分布
城柵は新潟県から東北地方にかけて築かれ、大和朝廷の治める地域が北へ広がっていくにつれて、城柵もより北に築かれていきました。
最初に築かれた城柵は渟足柵(ぬたりのき)(新潟県)。
渟足柵は647年に築かれ、8世紀(養老年間717〜724年)まで維持されていたことがわかっています。
最後に築かれた城柵は徳丹城(とくたんのき)(岩手県)。
徳丹城は811年に築かれました。
渟足柵から徳丹城まで約160年かけて、大和朝廷が新潟県から岩手・秋田県まで治める地域を拡大して言ったことがわかります。
大きさはまちまちで、最大の城柵は多賀城(たがじょう)(宮城県)の約1㎞四方、最小の城柵は徳丹城の約350m四方でした。
スポンサーリンク「多賀城」城柵はどんな形をしていたの?
ここでは多賀城を例に城柵がどんなお城だったのかを見ていきます。
多賀城をはじめとして、すべての城柵は「政庁と外郭(がいかく)の二重構造」をしていました。
「政庁」は政治をする役所であり、蝦夷の接待や使者の応対、儀式などを行う場所でした。
そして「外郭」が政庁とその周辺の役人の住居やその他の住民の住居・田んぼなどを取り囲んでいました。
どの城柵も政庁・外郭ともに四角形(正方形)をしています。とくに外郭は地形に左右されて正確な四角形にはなりにくかったようです。
城柵のなかの政庁も多賀城をはじめすべての城柵でカタチは同じで、太宰府やその他の地方の役所とも共通したカタチをしていました。
「正殿(せいでん)」を中心に、東西に「脇殿(わきでん)」「楼(ろう)」があり、正殿の後ろには「後殿(こうでん)」「北殿(ほくでん)」、「南門」を正門としていました。
復元されて城柵を理解しやすくなった「志波城(しわのき)」
志波城(しわのき・岩手県)では外郭の一部・南門・やぐらと、政庁の城壁・門が復元されています。
復元されていることで、より城柵を理解・体感しやすくなっています。お近くの方はぜひ訪れてみてください。
スポンサーリンクまとめ
今回は「城柵」について解説しました。
城柵は東北地方の軍事・政治拠点でもあり、交易をする場所でもありました。
城柵を知ることで、大和朝廷が一方的に支配していくのではなく、交易もしていたことがわかりました。
これで東北地方の歴史も理解しやすくなったのではないでしょうか?
城柵は新潟県や東北地方のお城です。
ぜひ近くへ行った際には、見学してみることをオススメします。